いにしえのうたごえ:0

ラテン語講座「いにしえのうたごえ~現代に生きるラテン語~」Web版へ、ようこそいらっしゃいませ。述べ役の「蒼き流れ」です。講座の始まりとなる今回は、講座のオリエンテーションとして、講座の目的と大まかな流れを示します。その後簡単に古代ローマについてお話をします。講座は今回を入れて全五回です。皆様どうぞよろしくお願いいたします。

当講座「いにしえのうたごえ」では、以下の三つを目的とします。

  • 「魔法の言葉」を唱えられるようになる
  • カタカナの言葉や横文字に強くなる
  • 多くの言葉の語源を知る

英語以外の外国語に触れるのは初めてだという方もいらっしゃるでしょう。ですが、心配はご無用です。上の三つのうち、どれかが少しでも出来たら講座の意味はあると思います。それは述べ役としては嬉しい限りです。もちろん、あなたご自身が楽しい時間を過ごせることも大事なことです。

当講座「いにしえのうたごえ」では、今回のオリエンテーションを含み五回の題目に分け、お話をしたいと思います。以下に示すのは、講座の内容です。

0.オリエンテーション…目的・流れ・古代ローマの話
1.彼らは星々を愛する…ラテン語文法の仕組みを解説
2.魔法の剣…ラテン語文法をもう少し詳しく解説
3.例えばあなたが物語をつくるとき…身の回りのラテン語について解説
4.ことば美術館へようこそ…ラテン語の名句を紹介

さて、オリエンテーションの話は以上です。いまからラテン語についてお話をしたいと思います。早速ですが、「ラテン語」と聞いて、あなたは何を想像するでしょうか?

音楽を好んで聴く方は、「ラテン音楽」というジャンルを思い起こすことでしょう。また、地理が得意な方は、イタリアの首都ローマにある世界最小の国ヴァチカン市国のことであったり、そこでの母国語がラテン語であったりすることを思い起こすことでしょう。そしてまたクリスチャンである方は、聖書がラテン語で書かれていたこと。世界史が得意な方は、かつての巨大国家ローマ帝国でラテン語が話されていたことを思い起こすでしょう。

実際に「ラテン語を学んでいます」と告白をして、返ってくる言葉やよく聞かれることの8割がたは「ラテン音楽はじめたの?」、後の1割でも「聖書の言葉でしょう」とか、やっと残りで「文法が難しいですよね」などとなっているのが現状です(少なくとも私の場合はそうでした)。つまり、ラテン語はどのような言語か、あまり知られていないのが現状です。では、講座のサブタイトルである、「現代に生きる」とはどういうことでしょうか。

前述したように、ラテン語という言語は、日本ではあまり知られていません。ところで、私たち日本人は、平安時代に詠まれた和歌を楽しむことができます。また、ことわざや文豪の残した名句や名文などを日本人の共通の財産として思い起こし、実生活で使うことができます。また高校では国語の授業で古文・漢文を学んだ方もいらっしゃるでしょう。実はラテン語も同じです。現代の日本人が和歌や文語調の言い回しやことわざを知っていて実生活で活かしているように、現代の西洋人はラテン語で書かれた碑文や書物からことわざや名句を、彼らの共通の財産としているのです。こんにちのアメリカやヨーロッパの方が政治的もしくは宗教的な(キリスト教になぞらえた)スピーチをするときに、必ずと言っていいほどラテン語の名句・ことわざが用いられます。そういう意味で、「ラテン語は現代に生きている」のです。

ここからは、あまり知られていないことをお話したいと思います。
古代ローマの男たちは、「節操」、「尊厳」、「権威」を美徳としていました。古代ローマは現代からさかのぼることを約2000年前に、共和政から帝政に変わりました。その政変の真っただ中にいたユリウス・カエサルが暗殺され、後継者であったオクタウィアヌスがアウグストゥス(弥栄な人、の意)として初代皇帝になった頃の話です。

「古代ローマ」と一口にいっても、その歴史は様々です。約2000年前と言いましたがこれは共和政から帝政に移行した時代のことです。さらにその前のローマは王政でした。さらにさかのぼるとどこまでゆくのか…。

私たちが知ることができるのは、ローマ人たちが残した叙事詩や、碑文、遺跡などです。それらを読み解き、調査することで過去はどうであったかを知ることができます。現実に出来事があって、それで当時のひとびとがはどう生き、どう困難を乗り越えてきたか。その繰り返しが人間の歴史です。私たちは彼らの後に生まれ、したがって彼らのことを直接知ることはできません。ですが、残されたものを調べれば「こんなことがあったんだ」とうかがい知ることができます。

では、古代ローマ人は、一体どのような「残されたもの」を残したのでしょうか。叙事詩や碑文、遺跡を読み解き調査して、古代ローマの起源は正確に分かっているのでしょうか。
はい。実はその答えは誰にも分かりません。

古代ローマ人が残した叙事詩に、ひとつの伝説があります。

むかしむかしのお話です。
トローヤ、という国がありました。トローヤでは、三人の女神、ユーノー、ミネルウァ、ウェヌスが美を競い合っていました。あるとき、トローヤの王子パリスが、一番美しいのはウェヌスだといいました。パリスは、ウェヌスからの褒美としてギリシアの都市スパルタの王妃ヘレナをお嫁さんにもらいトローヤに還ってきます。三人女神のうち、ユーノーは悔しくてしょうがありませんでした。ユーノーは自分を選ばなかったトローヤの王子パリスのことを許せなかったし、ギリシアの民も、王子が自国の王妃を嫁にもらうことが納得がつかなかったのです。
かくして、ギリシア対トローヤの、神々をまでも巻き込む10年にもおよぶ戦争が始まります。「トローヤ戦争」です。トローヤは結局、ギリシア勢の戦略で(トロイの木馬で)敗北を期してしまい、残されたトローヤの民たちは長い旅の末、イタリア半島に着き国を築きます。この落人の民の長、アエネーアースこそが、古代ローマの発祥だとされています。

明確な証拠はありません。ただ、古代ローマの大詩人ウェルギリウスの代表作「アエネーイス」には、この民たちの物語が書かれているのです。この作品では、アエネーアースは、美の女神であるウェヌスの息子と言うことになっています。
家族、仲間と共にイタリアに行きついたアエネーアースは、ラティウムという現地の国の王の娘と結婚し、子どもをもうけます。その子どもの子孫がロムルスとレムスという兄弟です。ロムルスこそは、ローマ建国者にして初代ローマ国王となりました。紀元前753年4月21日、ローマが誕生します(この年月日は正確なようです)。

いっぽう、アエネーアースには、すでにアスカニウス、別名イウールスという子どもがひとりいました。トローヤの女クレウーサとの間にできた息子です。彼は、アエネーアースのあとに何世も代を継いでユリウスという家系を作ります。このユリウス家が、上述した「ユリウス・カエサル」に行きつくわけです。

つまり、古代ローマ人たちは、自分たちの先祖を、由緒あるものにしたかった、ということです。事実はどうあれ、です。

以上で、古代ローマについてのお話を終わるとともに、オリエンテーションも終わることにします。古代ローマについて、ちょっと詳しくなった気がしませんか。
それでは次回、お会いしましょう。

投稿者: lute369

生きている限り、学ぶこと。それが私のすることです。 Dum spiro,disco.

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