いま、ラテン語の文法書を読み直している。ラテン語を日本語に訳す練習問題が、すでに名言である。少ない文字で、一気に想像をかきたてられるのはなにも日本における俳句・短歌だけではない、ということだ。
私は突飛もなく横文字を思いつく習性がある。今回の投稿のタイトルにある、「サルカンウァネスト」は、Twitterでつぶやく際に、非常に短い時間で思いついた横文字である。人名として思いついた。蒼い迷彩服にライフルを一丁かついでいる、そんな女性を想像してもらえるとありがたい。
「ずいぶんと長い名前だ」
「…よく言われるわ。子どもの頃、ずいぶん苦労した」
「クールな物言いだな。その背中にかついでいるモノが君をそうしたのか?」
「そうじゃない。あなたが『クール』と呼んだのは、きっとこの蒼の迷彩服のせいよ」
「よくわからんが…、そろそろ仕事の話をしよう」
これは、相当危ない話だ。
だから報酬はたんまり渡す。1000万ペニーだ。素晴らしいだろう?
きみには、ある国の大統領をやってほしい。もうすぐ「入れ替え」のときなのはきみも知っての通りだろう。現在の大統領は、任期があと数か月しか残されていない。次期のに繋ぐために、現大統領は、近々軍事パレードを開くつもりだ。きみは強くて賢い狙撃手だ、だから大統領が演説するサント・ドヴァンヌ凱旋門から数百メートル離れた民芸館屋上からよく狙ってほしい。理解したかね?
その時私は、もう裏側で何が行なわれているのか想像できないわけはなかった。「ある国の大統領」が、悪政や暴言で民から嫌われていたのは国外の私にも聞こえていた報せだった。「誰かにこの星を牛耳る国の代表を始末してほしい」…か。私がこの仕事でミスをしたら、おそらく世界で大きな戦争が起きるだろう。私はコクン、と男に頷いた。
いい返事だ。
では、早速、詳細を始めよう。これが凱旋門周辺の地図だ―――。
私の視界は歪み、反転してゆく。狙撃手らしからぬ、これは異常なことだった。人類の存亡をかけるほどの出来事が起ころうとしている、そんな「きっかけ」を与えるだなんて。でも私は、負けない。
負けてたまるか。
いままでがそうであったように、そしてこれからもそうであるように、私は、生きる。この仕事が終わったら、月で、ワインとしゃれこもう。1000万ペニーのワインを、この星の外側から眺めるのだ。月には、地上の醜悪なひとはいない。いるのは、私だけ。そうでしょう?