テレビに向かって、一言を投げやる。
「この毒電波め」
私が見てきたものは、私ではない誰かが選んだものだ。誰かが勝手に選んだ周波数を私は見て聞いてきた。幼いころからそういう作られた環境にいた私は、周りの多くが期待したように、やはり作られていった。
そうだ、私は自分から自分を作ったのではないのだ。
過去のある時点から、私は芸術家に憧れるようになった。自身の精神世界を作り上げることは、とても素晴らしいと思う。そこには誰も見たことがない、本人しか分からないものがある。
一週間前、カーヤという女性と知り合った。きっかけは、ある会食で同じテーブルに座ったからだった。自己紹介をする場面では、私は思い詰めていたことをストレートに言った。
「私はリンといいます。箱詰めにされた世界で生きてきました。テレビ・ラジオはみんな虚構ですし、害悪です。私は自分の眼で見たものしか信じません」
会食の自己紹介で言うような言葉ではないことは充分承知していた。しかし私はそう言いたかった。多くのひとが私の発言に険しい表情をしていた。そんななか、カーヤだけは違った。
「あなたの言ったことは、私も同感よ。私たちが見るものは、ほとんど虚構だと思うし、実際、誰かの意図が働いたものにすぎないわ。だから私は、自分の眼で見たものをそのまま形にしているのよ。陶芸をしたら、あなたはいい腕を振るうでしょうね。あなたの作る世界を私は見てみたいと思う」
私は初めてこの世に理解者がいた、と感じた。それ以来、私はカーヤの工房にちょくちょく寄ることになったし、実際に作品を作らせてもらったこともあった。
私は初めて、自分から自分を作り始めたのだ!
個人の作品を展示する会で、自分の作品が公にされるのを目の当たりにした。彼らには、作品がどう見えるのだろうか?作品を見て、何か響くものがあったら嬉しいものだ。
ある日、マイクを持った青年が私のもとへ寄りかかり、幾ばくかの質問をしてきた。どうやらテレビの取材らしい。あの虚構屋が、私に牙をむいたのだ。私は怒り、自分の作品をテレビカメラに思い切り投げつけ、一言投げやった。
「この毒電波め。そうやってすぐにひとを作ろうとする。私を映すな。お前たちがしている行為で、あらゆる世界が虚構になるのだ。いますぐ退け!」私は力いっぱい叫んだ。
私は、自分で自分の世界を壊したのだ。