いにしえのうたごえ:2

先の「いにしえのうたごえ」:1では、ラテン語は語尾変化が命だと申し上げました。そして実際に文章を作ってみましたね。ここまででは、「星」、「愛する」しかラテン語を知らないので、物足りなさを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、新しい言葉を三つ、以下に示します。

動詞、与える「do」の変化
do…私は与える ドー
das…あなたは与える ダース
dat…彼は与える ダット
damus…私たちは与える ダムス
datis…あなたたちは与える ダーティス
dant…彼らは与える ダント

名詞、剣「gladius」の変化
単数
主格…gladius グラディウス
属格…gladii グラディイ
与格…gladio グラディオ―
対格…gladium グラディウム
奪格…gladio グラディオー
呼格…gladie グラディエ
複数
主格…gladii グラディイ
属格…gladiorum グラディオールム
与格…gladiis グラディイ―ス
対格…gladios グラディオース
奪格…gladiis グラディイ―ス
呼格…gladii グラディイ

名詞、言葉「verbum」の変化
単数
主格…verbum ウェルブム
属格…verbi ウェルビー
与格…verbo ウェルボー
対格…verbum ウェルブム
奪格…verbo ウェルボー
呼格…verbum ウェルブム
複数
主格…verba ウェルバ
属格…verborum ウェルボールム
与格…verbis ウェルビース
対格…verba ウェルバ
奪格…verbis ウェルビース
呼格…verba ウェルバ

「gladius」、「verbum」の変化を見てみましょう。星「stella」とは違った語尾変化をしています。これは実は、ラテン語の名詞には5種類の変化パターンがあり、そのパターンごとに変化の仕方は違うからです。stellaは第一変化名詞、gladius、verbumは第二変化名詞といった具合に分類され、それぞれのパターンの変化に従います。その他に第三変化名詞、第四変化名詞、第五変化名詞とありますが、この三つは当講座では扱いません。

そして第一変化名詞は、だいたい女性名詞で、第二変化名詞で主格が-usで終わるのは男性名詞、-umで終わるのは中性名詞です。驚くなかれ、ラテン語には名詞に性別があるのです。といっても生物学的な性ではなく、言語的な性です。stellaが女性名詞なのは、星はきれいで女性っぽいから、gladiusは強くて男性っぽいから性がつくわけではありません。厳密な定義は存在しません。ラテン語の学習においては、名詞が出てきたら、変化パターンと性をセットにして覚えます(根拠は追求せずに!)。それがラテン語学習者の定めなのです。

さて、ここからが今回の主題です。ラテン語の動詞、名詞の次は、ラテン語の形容詞について述べたいと思います。形容詞とは、基本的に名詞を修飾する品詞です。ラテン語の形容詞についてお話をする前に、日本語での形容詞をみてみましょう。

  • 激しい雨
  • 無邪気な子ども
  • 斬新な発想
  • 古い時計
  • 愚かな選択

これらの例で出てきた「雨」、「子ども」、「発想」、「時計」、「選択」は全て名詞です。そして、「激しい」、「無邪気な」、「斬新な」、「古い」、「愚かな」というのが直後の名詞を詳しく修飾しています。つまり、どんな雨か、どんな子どもか、どんな発想なのか…を説明しているわけですね。

ラテン語の話に戻りましょう。早速、形容詞、「魔法の」magicusの例をして次の言葉を示します。

まず、「えっ、こんなにあるの?!」と思われた方がいらっしゃったかもしれません。確かに「こんなに」あるのですが、いままで名詞の変化パターンを注意深く見てこられた方は、あることに気付くと思います。と申し上げるのも、第一・第二変化名詞の変化パターンとそっくりなことに、です。

実はラテン語の形容詞は、修飾する名詞の性・数・格によって語尾変化のパターンを変えるのです。つまり、修飾する名詞が男性名詞で単数与格であれば、形容詞も同じく男性単数与格の語尾にします。実例を出し、その様子を見ていきましょう。
「魔法の剣」という言葉を作ってみましょう。「剣」は、上述したようにgladiusで男性名詞です。この単語に、形容詞、「魔法の~」を意味するmagicusを添えるわけです。単数主格であれば、”magicus gladius”、となるはずです(性・数・格の一致)。

「私たちは、星の言葉を愛する」
前回学んだことを思い出しましょう。まず文章のなかで動詞をみつけるのでしたね。この文では、「愛する」ですね。では次にすることは、その動作を行なうのは誰かみつけます。この文章からは、それは「私たち」であることが分かります。そして最後に、その動作の向かう先をみつけます。これも容易に分かる通り、「星の言葉」ですね。そのうえで、日本語をラテン語になおしてゆきます。前々回の記事で述べたように、ラテン語では動詞は語尾でおおよその主語が分かるのでした。ここでは、「私たちは愛する」とセットにして、amoの複数一人称の変化形amamusを動詞として持ってくれば良いです。次に「星の言葉を」ですが、これは分解すると、「星の」、「言葉を」、つまりstellaの単数属格とverbumの単数対格を添えればよいですね。
このように考えると、模範解答は、Stellae verbum amamus.となります(反転してください)。

「君は剣を与えるのか?」
これは疑問文です。思い出しましょう。「はい」か「いいえ」で答えられる疑問文は、尋ねたい言葉の語尾にneをつけるのでしたね。同じように上述の太字に注目していけば、模範解答はDasne gladium?になります。

「彼女は剣を愛していない」
これは否定文です。否定文は、否定したい言葉のすぐ前にnonをつけるのでしたね。これも同じように動詞、その行為者、動詞の向かう先を考えると、Non amat gladium.になります。

「星よ、魔法の剣を与えたまえ」
命令文ですね。命令文を作るには、ラテン語の動詞のことを知っておかなくてはいけないのでした。覚えていますか? Stella,da magicum gladium!が答えです。

「彼らは魔法の言葉によって愛する」
これが最終課題です。動詞に注目して、行為者、向かう先を見ていけば、必ずラテン語の文章を作れます。Magico verbo amant.となります。

さて、ここまでがラテン語文法の初歩で知っておくべきことです。ここまでたどり着いた皆様は、ラテン語文法の初歩まで到達できたので、文法についての長い話はここまでにします。次回からは、ラテン語由来の言葉、ラテン語の名句やことわざを紹介していきます。次回からのお話では、いままで私がお話した文法の説明を覚えておくだけでOKです。あと必要なのは、想像力です。ラテン語の言葉を楽しむために必要なことは何かを具体的に挙げると、

  • 動詞をみつける
  • 誰がその行為をしているかを理解する
  • その行為は誰に向かっているか理解する

ということです。これはどこかで見かけた言葉です。果たしてそれはどこでしょうか?

今回のお話の最後に、皆様に魔法の言葉をお伝えしようと思います。それは一日中使えて、ひとのことを思いやることができる言葉です。
それは、ラテン語の挨拶の言葉です。

Salve! サルウェー

ラテン語で「こんにちは!」という意味です。もともとは「元気である」という動詞salveoの命令形です。つまり「元気であれ」という、話者の思いがつまった言葉なわけですね。なお、これは単数二人称の命令です。複数二人称の命令は、

Salvete! サルウェーテ

となります。
それでは次回にお会いしましょう。Salvete!

投稿者: lute369

生きている限り、学ぶこと。それが私のすることです。 Dum spiro,disco.

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