どうぶつが暮らすその島の浜辺に打ち寄せられる貝殻の種類には、ある統計的な法則があると君は言った。
私はとある島の代表だった。だった、ではなかった。である、だ。代表を続けてもう4年になる。島は、3つの区画に分けて作った。一つは、「文化区」。商業施設や、博物館がある。区の中央には広場があり住民たちの憩いの場になっている。もう二つは、「住居区・北西」と「住居区・南東」だ。島には私を入れて十一人のひとが住んでいる。島一番のアスリート、オズモンドは言った。
「なあ代表、今日もセパタクローをやるから付き合ってくれー」
私は返す。
「島の見回りがあるから今度にしてくれないか」
オズモンドは残念そうな顔をしたが、私は彼は簡単に引き下がらない性格であることを知っている。
「なら代表、一緒に島の見回りをしてもいいか? オイラとオマエがいる限り島は安全だからな!」
彼の機転の速さには私はいつも驚く。みんなは脳筋といってバカにしているが、オズモンドは実のところそうではないと思う。
北西区にある竹林から見回りは始まった。
私は注意深く辺りを見まわす。その日の朝のことだった。竹林のなかにいると、なんとなく虎を思い出す。以前旅行に行ったとき、虎のどうぶつに出会ったことがあったが、名前を思い出せない。お仕事でも確か虎の子が別荘を探しているところを見たような気がする。
「おい代表! 前を見るんだ。もうすぐ北西海岸だぞ。貝殻を拾ってDIYするんだろ?」
オズモンドの言う通り、北西住居区の更に北西にある竹林を抜ければ、北西海岸へ着いた。彼の言う通り、私は貝殻を拾ってDIYをして、そのたびに島のどうぶつにプレゼントしていた。なかでも貝殻のオルゴールは神秘的なプレゼントだと思う。
「そういえば代表。オイラさ、島に流れ着く貝殻をよく見てみたんだ。流れ着く貝殻は7種類あるんだけど、よく流れつく貝殻と全然そうじゃないのがあるってことに気付いたんだ。へへっ、すごいだろー」
「へぇ、それはすごいな。浜辺に着く貝殻にそんな法則があるなんて。それを見出したわけだ。たぶん、ここが北西の海岸だってことも関係するんだろう」
「どういう意味だ?」
オズモンドは興味深そうに首を傾げた。
「この島は大海のうちにある一つの小島だ。周りには海がある。小島だから、おそらくひとつの海流があると思う。北西に貝殻が沢山あれば、たぶん、北西から流れる海流に乗って貝殻は流れ着く…と思うんだ。そして、南東にはあまり貝殻は流れ着いていない」
「なんでだ?」
オズモンドは貝を拾いながら言う。私は続けた。
「北西からの海流があれば、反対位置である南東には貝殻は流れ着く可能性が低いだろうってことさ。素人考えだけどな」
「オマエ、フータに教えてもらったほうが良いかもなー! 変にそういうホウメンに詳しいからフータに色々聞いてみろよ」
「そうだな、ありがとう。さて、貝殻を拾ってDIYするか。今日は異常なし、だ」
私が代表のこの島では、ありとあらゆるところにDIY作業台がある。素材を集めたら、その場所ですぐDIYできるように工夫したのだ。私は博物館でフータに「流れ着く貝殻」について話した。
「それは興味深い話です! 実は私も貝殻について同じことを考えていました! 例えば軽い貝殻は重い貝殻より北東・南西に流れ着くことを私は見出しています。これはこの島を囲む海の流れが北西方向からのものであるというあなたの仮説を証明していることになり、そして…」
「兄さん、落ち着いて…」
喫茶・ハトの巣で私とフータ、彼の妹のフーコで貝殻について議論を交わしていた。「私の思うところ」フータは興奮して言った。
「私の思うところ、島の浜辺に打ち寄せられる貝殻の種類には、ある統計的な法則があります」
とても興味深い話だった。
「例えば見てください、これは私がコンピュータに描かせたグラフです。島に流れ着く7種類の貝殻それぞれがどの割合であるかRで統計をとりました」
フータは、画面に示されたヒストグラムを指さした(いや、フクロウには指はなかったっけ?)。さながら、学会で研究発表する学者そのものだった。
重いとされる貝殻は北西海岸に多く流れ着いている。相対度数が30%を越えていて、ヒストグラムの頂点近くに位置していた。では、南東海岸・北東海岸のヒストグラムを見ると、軽いとされる貝殻のほうが多く流れ着いている。このデータはフータの仮説を確からしくしているわけだ。
「お客さん、コーヒーの飲みすぎはいけません…」
マスターは、議論ごとにコーヒーをたくさん飲む私にそう言った。思考はブラックが良いのだが、そういうわけにもいかないのだろう。
やれやれ、今日はとんでもなく学術的な島の生活になった。まあ、こういう日もいいだろう。