いろいろな話を生み出すには、ものすごくエネルギーを使う。なにしろ、新しい命を吹き込むことをしているのだから。物語や詩、あるいは絵画や音楽まで、創造するひとは素晴らしい。私は心からあなたを褒めたいと思う。「あなたの作る世界が好きです」と。
コルケオーは11才の少年だ。通う学校では、成績は中の上くらい。好きな科目は社会。苦手な科目は体育。初恋は、まだらしい。今日はプール学習がある日。コルケオーは水泳が大の苦手。水に顔を入れるのが耐えられないようだ。
「コル、今日の3時間目はおまえの嫌いなプールだっけ。水の中で目を開けられるようにな!」
そういって、意地悪なアバリスは2時間目の算数の授業中、クラスメイト経由で手紙を送る。意地悪なアバリスだけども、本人は好意でコルケオーを励ましている、とクラスの女子たちが噂していた。
「それでは、問題です。横幅2mの25mプールが5レーンあって、深さはどこでも0.75mあります。このプールの容積はいくらになるでしょうか?」
「ちぇ、先生まで次の授業のことを言うんだ…ひどい、あんまりだ」
だけども、コルケオーは眼鏡を直し、一心不乱に計算を始める。小数点のかけ算は、コルケオーは先日習ったばかりだった。
「はい、できました!」
「おお、コルケオー、計算が早いね。さすがです。それで、答えは?」
「5レーンもあるプールには行きたくありません! なぜ0.75mもあるんですか? 僕は溺れてしまいます、そんなプールには行きたくありません!」
クラス中、大笑い。
毎日、コルケオーの出す答えには、みんな笑った。
コルケオーがプール嫌いなのにはもうひとつわけがある。
「僕は視力が悪いです。目の検査の『まる』があるけれど、一度も当てたことがないです。父さん、眼鏡作って」
コルケオーの親は眼鏡屋を営んでいた。息子のコルケオーのために、父さんは一か月かけて眼鏡を作り出した。分厚いレンズがあるが、軽くて頑丈なフレーム。かけても頭を変形させない、やさしい作りになっていた。
その眼鏡を外し、しかもプールに入るだなんて。
コルケオーにとっては地獄だった。
「僕はプール授業が嫌でしょうがないです。父さん、眼鏡を外さなくてもいいようにならないかな」
「コルケオーや、この眼鏡をかけなさい。これを使えば、水の中でも目が見える。水に触れることなくな。名付けて、レンズゴーグル、だ」
それは、私たちの世界での、いわゆる「ゴーグル」にレンズが組み込まれた眼鏡だった。父特製のゴーグルで、彼はどんなに苦手なものを克服するのだろう。彼は、顔に水をつける瞬間に、父の背中を想わずにはいられないだろう。
どんな「作ったもの」も、作者の愛情がこもっている。父が息子に送ったゴーグルのように。私は、「ゴーグル」を作り出せるようなひとになりたい。そうして、ひとの心を打ち震わすような、そんな創作をしていきたい。