きみのたんじょうび / 恋愛書簡詩


さあ、おひめさま
民が待っております
いま、あなたの記念すべき時を
ともに分かち合う日がきたのです

私は「おひめさま」なんかじゃない
私もあなたが言う「民」のひとりだもの、
気楽に、自由に、素直に 生きたいわ
ねえ、セバスチャン、私はいま、困っている

なんと! おひめさま、困っていると?
どうぞ私めに お話しください!

貧民街に住むあの方から頂いた「ラブレター」
そのお返事を、書きたいの
インクはもちろん、パッションスイートでお願いするわ
第一パラグラフは、こう。

月見の塔で 夜のとばりが訪れる頃
少しの時間をご一緒いただいて 感謝しております
僅かな時間でしたが 私にとっては悠久なる時間でした
そのとき話して下さったこと、私は決して忘れません
もしよろしければ またご一緒させてもらえないでしょうか?

いけません! おひめさま!
貧民の者とお戯れていれば いつか閣下からバツが与えられましょうぞ!

何言っているの、セバスチャン
いまどき、身分が違うひと同士、自由なお付き合いがあってもいいでしょう
おとうさまは、考えが古いのです
そんなことより 私は、あのかたのことが忘れられません!
真っすぐしたまなざし、優しい手、賢い話しかた
なんて素敵なのでしょう!

ともかく明日は、おひめさまの誕生日です
多くの者が待っておいでです
その者のことはお忘れなされ あまりに身分が違うのでございます

初めての恋は
どこかの国の王子さまなどではなく
あの日、私にいっぱいの「宝石」をくれた、あなたでした
たくさんのきらきらを、私はあなたから教えてもらったのです
私はとまどい、くるしみ、泣いてしまいました
こんなにも素敵なあなたがそばにいる、その一瞬のことも忘れられないのです
いま、あなたはなにをしているのでしょう? 空を見て、川に馳せ、おひさまにふられ
強く生きるあなたに 私は 恋を…、してしまったのです
こんな私のことを あなたはおかしいと思うでしょうか?
いいえ、あなたはこう、おっしゃってくれました
「きみが誰だかわからないけど、いつも空を見ている、そんなきみが好きだよ」と。

私はいま、セバスチャンに引かれ
たくさんの民の前で 16歳の誕生日をむかえています
このなかにあなたはいらっしゃるでしょうか
名前のないあなた、あなただけに誕生日を祝ってほしい
とても、苦しいほど、大切なあなた
やっぱり私は、恋をしている
私の心のなかで、革命が起こっているようです

願っています、今夜、月見の塔へ行ったら、
あなたに 会えますように、と。

投稿者: lute369

生きている限り、学ぶこと。それが私のすることです。 Dum spiro,disco.

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