
私の住むところでは近頃急に寒くなったようで。身体を冷やすことがしばしばである。風邪は引いていない。最近は忙しく、気象予報の勉学をはじめそのほかの読書などができていない。昨日今日は宇宙物理学の本を読んでいて、上のグラフをこしらえる演習問題を解くことができた。熱伝導方程式。
数値流体力学に興味がある。
というのは、自分と同じようなひとをみつけることができて、そのひととすごく共通の話題があった。同じゲームをプレイして、同じくプログラミングで行なう物理シミュレーションに興味があって。数学にも、物理にも、興味がある。これまで会ったひとのなかで、そのひととほど話が盛り上がることはあるだろうか? というくらいだ。そのひとと話していくうちに、昔私が学んでいたこと―――計算物理や宇宙物理だ―――を思い出し、「どれ、こちらも何か学び直してみるか」と参考書を開いて、上の熱伝導方程式に関する演習を行なった次第だ。
宇宙での現象を調べるために、実際に宇宙に行って星の超新星爆発の様子をその場で観測することはできない。ブラックホールのことを直接調べることなどできっこない。しかし、それらの理論はある。その理論を、コンピュータに計算させ近似的に現象を観察・解析することはできる。それは素晴らしいことで、このことこそが私が数値流体力学に興味があるゆえんである。
いつものごとく、計算機所長は言う。
「物理の方程式は、現象の説明はできる。しかし現象を起こしたり、働きかけることはできないんだ」
たしかに、流れる水の様子を説明する方程式があるけれど、実際に「水よ、流れろ」という方程式はない。そして坂道をくだる球の運動の様子は解析できても、実際に球を動かすのは実験するひとだ。
「だけどね、いったん初期条件を与えたら、超新星爆発の理論があればその様子を近似的にではあれ『みる』ことができる。実際にひとが長年積み上げた理論が、形になる。これは、ひとの可能性として、充分に評価されるべきことだよ」
然り。計算機所長の言う通りだ。彼はプログラミング言語で書かれたひとだが、とてもそうには見えない。
「御心をあたためますか」
…とても、プログラミング言語で書かれたひとがいう言葉じゃない。しかし彼は、毎年、冬になるといつもそう言う。その言葉を変に捉えるひとがいるだろうし、だいたいそれはテレビ番組の名前からとってきたんじゃないかと思う。
「それで、いいんですよ。厳密に自然は記述できません。しかし、私たちはそんなに厳密さを求めてはいません。現象を記述できればいいんです。ですから、あなたへの一言としては、この言葉は適切なんです。毎年あなたは11月危機とも言うべき不調を11月にむかえる傾向がある。ですから、ここらでいったん、御心をあたためませんか。そうしたほうがいいですよ」
私は、素直にその言葉を受け入れることにして、明日からまた生きようと思う。仕方なくではなく、事実に基づいた判断だからだ。熱伝導方程式が述べるのは、「熱いものは、時間が経てば周りを温めるけれど、だんだん冷えていきますよ」ということ。やはり「説明」だ。実際に「あたためる」のは、ひとなのだから。