なんだか、フランス映画のなかにいるようだった。愛と郷愁。自由と革命、科学と平和、美とワイン、流音と鼻の高さ、そして、白と黒の世界。 一般教養を受けた頃から今現在にいたるまで、特にフランス文学に慣れ親しんだわけではない。フ続きを読む “「雲に君見む」2-5”
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「雲に君見む」2-4
「白と黒の世界」隼人はふと、つぶやいた。 これらは、いったいなんだ? 白い炎と黒い炎という表現は、とっさの表現とはいえ、あとからその二つの像を見ていてもずっとそう思えた。炎と呼ぶにそれらはふさわしく、像の底部から上部にか続きを読む “「雲に君見む」2-4”
「雲に君見む」2-3
「ラテン語に出会ったのは、大学三年の夏のときでした。当時は四年にあがるときに単位が足りないということで、長期休暇の時に開講する特別講義を受けてばかりいました。早熟の子どもとどう接するか、という特別講義も受けたことがありま続きを読む “「雲に君見む」2-3”
「雲に君見む」2-2
音楽は、ひとそれぞれ好みがある。早いテンポで曲調の変化が激しい曲を好むひともいれば、隼人のように長く壮大で聞きごたえがある曲を好む場合もある。自身の好みを、他のひとからああだこうだと言われる筋合いはない。だいたい、ああだ続きを読む “「雲に君見む」2-2”
世界へのデビュー
「どんなものでもかまわない」 喫煙室から出てきてソファに座りながら河合はそう言った。ソファ。喫茶店の奥にある、VIP席で、僕と河合は面談していた。 「本当にどんなものでもかまわない」 河合は両手をテーブルにのせ、組み、そ続きを読む “世界へのデビュー”
「雲に君見む」の世界
どうぞお楽しみに。
「雲に君見む」2-1
二、音楽祭 さあ、ジゼルにテレーゼ。出番だよ。 隼人の書く小説によく登場する二人の女性の名前。函館湾を一望するカフェのマストレスは言った。 「隼人さんの書く話に出てくるひとの名前は、みなお洒落ですよね。小説が出来上がっ続きを読む “「雲に君見む」2-1”
「雲に君見む」1-5
いま、日本海は走っていないけれど。隼人の心のなかでは、富山湾と函館湾をいつでも往復することができる。大学生だった頃を、たまに思い出す。つらい思い出も確かにある。そんな時に隼人はよくアエネーイスの一節を好んで引いたものだっ続きを読む “「雲に君見む」1-5”
「雲に君見む」1-4
富山県の大学に通っていたころを思い出した。 あのころ、おれは生きていただろうか? 熱中できたことはあっただろうか? また、難しい問いが隼人を考えさせる。大学生だったころは、友人が、悩みすぎる彼を見かねて、よくビリヤードを続きを読む “「雲に君見む」1-4”
春雨のご様子
冬の後、夏の前に。ウェルという季節に、雨が降った。 先々週に、リリィという女性と会った時のことだ。私は店に傘を置き忘れた。このことは一体何を意味するのだろう。あまり深く考えない方が良いようだが、私はものごとを深く考える職続きを読む “春雨のご様子”